論文概要
- 料理学校の学生は、顧客の要求に応えるためにアニマルウェルフェアを学ぶ必要がある
- 従来使われていない生物種の感覚能力についても、現在の科学的知見を知る必要がある
- アニマルウェルフェアの科学によって倫理的な食品生産が可能となる
- 美食の革新には責任ある食材調達とのバランスが重要である
料理業界は美食の卓越性を追求するだけでなく、アニマルウェルフェアへの社会的関心の高まりにも対応しなければならない。この総説では、現代の食料システムの中でアニマルウェルフェアに関連する科学技術の進歩(培養肉やプラントベース代替肉など)について詳しく検討し、バリューチェーンの中でウェルフェアリスクと倫理上の問題が発生する 5つの重要な段階(動物の繁殖と飼育・輸送と取り扱い・屠殺の方法・流通と調達・調理の方法)について概説する。
本稿では、アニマルウェルフェアの枠組みとして「5つの自由」から、動物の感覚や能力に関するモデルを含めて統合する。特に甲殻類と昆虫については、スイスでロブスターを生きたまま茹でることが禁止されていることなど、予防措置が取られているが、これらの施策を促してきた実証研究における問題点を明らかにする。
さらに、主要なイノベーション、培養肉への規制に関するマイルストーンとなった3月21日および2023年7月、エンドウ豆タンパク質からセイタンまでのプラントベース代替肉、そして新たな昆虫由来タンパク質の応用について順に解説し、将来、ガストロノミーの質と動物への危害を切り離せる可能性について検証する。
EUと米国における規制の枠組みや民間の認証制度を比較し、審査の基準が統一されていないためにサプライチェーンにおけるコンプライアンスが一貫したものになっていないことを明らかにする。
今後のロードマップとしては、料理学校のカリキュラムの中にアニマルウェルフェアに関する科学研究を取り入れること、さまざまな利害関係者の間のパートナーシップを促進すること、精密畜産と垂直農法の技術を活用することなどによって、持続可能で責任と思いやりのあるガストロノミーを進化させていくべきである。
Anastasio Argüello, Marta González-Cabrera, Antonio Morales-delaNuez, Lorenzo E. Hernández-Castellano, Manuel Betancor-Sánchez, Noemí Castro
2025/05/11
Balancing culinary excellence with ethical responsibility: A scientific perspective on animal welfare in gastronomy